1
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-31 06:10
| Concert information
|
Comments(2)
前回の譜読みに続いて実際の練習の手順を書いてみます。
1 運指付け、ポジション確認。
ギター持って音出しの練習を始めますが、最初はとにかく運指とポジションの確認に努めます。運指は弾くたびに変わる事も良くありますが、出来るだけ明確にするようにします。例えば3の指か4の指かという細かいとこや、一フレット動くだけの小さなポジション移動も出来るだけハッキリとしておいた方がいい。こういう細かいところが最終的に暗譜を完成させる時に大きな障害になってる気がします。
2 出来るだけ声を出して歌う。時には楽器を手放す。風景をイメージする
楽譜を見て、楽器を弾くという作業は
インプット
楽譜と指の型を視覚から
出てくる音を聴覚から
指にかかる圧力を触覚から
と多くのインプットがありますがアウトプットは楽器の音だけです。このアウトプットを増やせば記憶の定着も更に良くなるはず、という事で練習中は積極的に声を出して歌う事にしています。実感として声を出すのが億劫になってきている時は練習に対する集中力がかなり落ちていると思います。
また一旦楽器を手放して楽譜を見ながら歌う時間を出来るだけ持つようにしています。練習の時間が長くなって疲れてくると逆に楽器を手放すのが億劫になる時がありますが、そういう時こそ勇気を持って楽器を手放してください。練習中には見えにくかった楽譜の全景がよく見えるのではないかなと思います。
その楽曲がBGMに使われるとしたらどんな場面かっていうのを考えたり、想像しながら弾くのもいいですね。映画の中で使われてる音楽は単体で聴くよりも覚えてるものです。風景と音楽をリンクさせるというのはとても効果的だと思います。
3 練習中は楽譜から目をきらずに練習。音出しはゆっくりと
特に練習を始めた頃は出来るだけ楽譜から目をきらずに練習してます。出来るだけ左手を見ない。ポジション移動が激しくて左手を見ないといけない時でも直ぐに譜面の弾いている場所に戻れるようにします。演奏中の感覚と楽譜を出来るだけ一致させるためです。
音出しは出来るだけゆっくりと一つ一つの音を味わいながら弾くようにしてます。楽譜を見ながら最後までゆっくりと通せるようになるまで続けます。ある程度できるようになってきたら目をつぶって楽譜をイメージしながら弾いてみるのもいいですね。
4 楽譜から運指をイメージする。
楽譜だけを見ながら最後まで運指がイメージ出来るかの確認作業。音出しとは反対の方向から記憶を埋めて行きます。
運指が直ぐに思い浮かべられないところは実際に弾いても落ちる可能性が高いです。楽器を持たずに先に運指を付けてイメージトレーニングをするという方法もあるようですが、私の場合は先に楽器を触って運指を付けた方がよりイメージを持ち易かったのでこっちの作業の方を後からやります。
家にいると色々と集中出来なかったりするので近くのファミリーレストランでやってました。ドリンクバーで何時間も粘ってたので嫌な客だったろうなと思いますw
最終的に脳内で左手の運指と楽譜のイメージを同時に再生出来る様になれば最高です。
前回書いた譜読みもずっと続けてください。練習の課程が進んで行くにつれて最初は意味をなさなかった音符のイメージが少しずつ変化して、頭の中に入ってきているというのが実感出来るのではないでしょうか。
楽器を持つ練習、楽譜からのイメージトレーニングを繰り返して、突っかかりながらでも最後まで弾ける様になれば九割方覚えたも同然です。後は、
5 録音する
これはとても効果があります。自分の音を録音して聴くのはなかなかつらい作業ではありますが、とてもいい練習になります。録音して直ぐに聞くのもいいですが、しばらく寝かせてから聞くとまた新しい発見があります。
一度録音を聴いてから再度練習すると確実に良くなると思いますし、覚えも早くなります。最近は安くていいレコーダーがあるので是非購入してやってみてください。
まだまだ改良点はありますが現段階ではこういう風に覚えるようにしています。
おまけ
タンスマンのダンサポンポーサを写譜して更に小節ごとに切り抜いた楽譜ジグソーパズル。
作ったはいいけど実際にはあまり使わなかったですw
写譜はいろいろと発見があるけれど、覚えるという点に関してはそれほど効果的な方法じゃないような気がしました。なんせ時間がかかります。カヴァティーナ組曲を全部書き写してパズルにしたら全部で7時間弱かかってしまいました…。だったらその時間を音読に回した方が良かったかもしれません。
1 運指付け、ポジション確認。
ギター持って音出しの練習を始めますが、最初はとにかく運指とポジションの確認に努めます。運指は弾くたびに変わる事も良くありますが、出来るだけ明確にするようにします。例えば3の指か4の指かという細かいとこや、一フレット動くだけの小さなポジション移動も出来るだけハッキリとしておいた方がいい。こういう細かいところが最終的に暗譜を完成させる時に大きな障害になってる気がします。
2 出来るだけ声を出して歌う。時には楽器を手放す。風景をイメージする
楽譜を見て、楽器を弾くという作業は
インプット
楽譜と指の型を視覚から
出てくる音を聴覚から
指にかかる圧力を触覚から
と多くのインプットがありますがアウトプットは楽器の音だけです。このアウトプットを増やせば記憶の定着も更に良くなるはず、という事で練習中は積極的に声を出して歌う事にしています。実感として声を出すのが億劫になってきている時は練習に対する集中力がかなり落ちていると思います。
また一旦楽器を手放して楽譜を見ながら歌う時間を出来るだけ持つようにしています。練習の時間が長くなって疲れてくると逆に楽器を手放すのが億劫になる時がありますが、そういう時こそ勇気を持って楽器を手放してください。練習中には見えにくかった楽譜の全景がよく見えるのではないかなと思います。
その楽曲がBGMに使われるとしたらどんな場面かっていうのを考えたり、想像しながら弾くのもいいですね。映画の中で使われてる音楽は単体で聴くよりも覚えてるものです。風景と音楽をリンクさせるというのはとても効果的だと思います。
3 練習中は楽譜から目をきらずに練習。音出しはゆっくりと
特に練習を始めた頃は出来るだけ楽譜から目をきらずに練習してます。出来るだけ左手を見ない。ポジション移動が激しくて左手を見ないといけない時でも直ぐに譜面の弾いている場所に戻れるようにします。演奏中の感覚と楽譜を出来るだけ一致させるためです。
音出しは出来るだけゆっくりと一つ一つの音を味わいながら弾くようにしてます。楽譜を見ながら最後までゆっくりと通せるようになるまで続けます。ある程度できるようになってきたら目をつぶって楽譜をイメージしながら弾いてみるのもいいですね。
4 楽譜から運指をイメージする。
楽譜だけを見ながら最後まで運指がイメージ出来るかの確認作業。音出しとは反対の方向から記憶を埋めて行きます。
運指が直ぐに思い浮かべられないところは実際に弾いても落ちる可能性が高いです。楽器を持たずに先に運指を付けてイメージトレーニングをするという方法もあるようですが、私の場合は先に楽器を触って運指を付けた方がよりイメージを持ち易かったのでこっちの作業の方を後からやります。
家にいると色々と集中出来なかったりするので近くのファミリーレストランでやってました。ドリンクバーで何時間も粘ってたので嫌な客だったろうなと思いますw
最終的に脳内で左手の運指と楽譜のイメージを同時に再生出来る様になれば最高です。
前回書いた譜読みもずっと続けてください。練習の課程が進んで行くにつれて最初は意味をなさなかった音符のイメージが少しずつ変化して、頭の中に入ってきているというのが実感出来るのではないでしょうか。
楽器を持つ練習、楽譜からのイメージトレーニングを繰り返して、突っかかりながらでも最後まで弾ける様になれば九割方覚えたも同然です。後は、
5 録音する
これはとても効果があります。自分の音を録音して聴くのはなかなかつらい作業ではありますが、とてもいい練習になります。録音して直ぐに聞くのもいいですが、しばらく寝かせてから聞くとまた新しい発見があります。
一度録音を聴いてから再度練習すると確実に良くなると思いますし、覚えも早くなります。最近は安くていいレコーダーがあるので是非購入してやってみてください。
まだまだ改良点はありますが現段階ではこういう風に覚えるようにしています。
おまけ

タンスマンのダンサポンポーサを写譜して更に小節ごとに切り抜いた楽譜ジグソーパズル。
作ったはいいけど実際にはあまり使わなかったですw
写譜はいろいろと発見があるけれど、覚えるという点に関してはそれほど効果的な方法じゃないような気がしました。なんせ時間がかかります。カヴァティーナ組曲を全部書き写してパズルにしたら全部で7時間弱かかってしまいました…。だったらその時間を音読に回した方が良かったかもしれません。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-30 08:02
| おんきち
|
Comments(0)
今回の大きなテーマはどうやって暗譜方法を確立するかでした。
完全に上手くいったという感じではなくまだまだ試行錯誤段階ですが、思った事、感じた事をメモしておきます。
・楽譜をよく見る。
暗譜をするに際して最も大切だなと感じた事はこれです。楽譜をよーく見る。
暗譜で演奏するとなると当然演奏時には楽譜を置きません。そうなると
”一刻も早く楽譜を見ずに演奏出来る様にならないといけない”
とついつい思いがちですが、これが一番大きな落とし穴だと思います。
"練習時には必ず譜面を目の前においておく。"
これを心がける様にしました。
一晩でベートーベンのシンフォニーを全部暗譜で指揮する”ベートーベン振るマラソン”という荒行をやってのけた指揮者の岩城宏之さんがピアニストのルービンシュタインとの思い出を記した本を読んだ事があるのですが、それがとても面白かったです。確か”楽譜の風景”という書籍だったと思うのですが…お時間があったら是非読んでみてください。
このルービンシュタインさんはちょっと尋常でない能力の持ち主で、いつ何処で誰と何を食べてどんな会話をしたのか、とかそんな他愛のないことでもしっかりと覚えていたらしく、楽譜なんかも一回見ただけで覚えてしまったとか…そんなルービンシュタインさんが岩城さんに語った内容は、
「音楽は楽譜を見て頭の中にフォトコピーして覚えるのが一番だ。音による記憶も、指による記憶も確かな物じゃない。」
とのことでした。
生徒さんとのレッスンをしている時に思うのは、みんなある程度楽譜を覚えると楽譜を見なくなりがち、ということです。左手ばかりを見る様になってしまうんですね。ある程度弾ける様になると楽譜の記憶を手の記憶にすり替えてしまうという事です。
勿論手で覚えるという事も必要だと思います。でもそこに楽譜の記憶も残っていないといけない。
美山でステファノ・グロンドーナさんがレッスン中に良く言っていた事ですが。基本的に
「指はバカ」です。
これは、”何もイメージせずに指に任せて弾いてもそれは音楽ではない、必ずイメージを持ってからそれを実現させる為に指を動かさなければいけない。”という意味なんですが、それプラス、"指だけに頼っている記憶は何処かで必ず危険を伴う。"という意味もあるのじゃないかなと思います。
私も昔は指だけの記憶で弾いていたので楽譜は覚えてしまうと全く見なかったです。ただ今考えるとそれは指の記憶を覚えていただけで、音楽として覚えていたわけではないんですね。周りに書かれてる音楽記号なんてほとんど意識すらしてなかったです。
それでいいわけがないなと。
ルービンシュタインの様な特殊な才能を持った方の領域には達する事は無理でしょうが、自分なりにフォトコピー出来ないかなと考え色々と試行錯誤してみました。記憶術なんかの本も何冊か漁ってみました。その何冊かの本に共通して書いていた事は
”記憶する為には繰り返しが大切”
という当たり前といえば当たり前の事でした。
ある本によると、初日に100の事を覚えたとしてその記憶は翌日には24まで落ち込んでしまうそうです。一週間後には21以下にまでなってしまうとか。それを例えば三日後に復習する様にすれば取り戻した記憶の落ち込み方は大きく減少します。これを繰り替えしているうちに曖昧だった記憶がどんどんと定着して最終的にはしっかりと頭に取り込まれて行きます。この復習の頻度を多くすれば記憶の定着も早くなって行きます。
それじゃ単純に弾く回数を増やせばいいのか…いやそれはしんどいです。毎日毎日テデスコのソナタを最初から最後まで弾くのはしんど過ぎます。やった方なら良くわかると思いますが、組曲やソナタを通して一回弾くだけでかなり疲労します。
というわけでこれを譜読みに応用しました。楽器を持たずに楽譜だけを見る正に”譜読み”です。勿論音を出す練習も平行して行いましたが、この譜読みは音出しをする以前からそれこそ演奏の当日になるまでずっと続けました。以下その手順です。これが誰にでもいい方法なのかは分かりませんが。なかなか役に立つ方法じゃないかなと思いました。
1 一小節を一秒で読む。
頭の中で写真のシャッターをきるように一小節を頭に張り付かせるイメージで。時計の秒針の音を聞きながらやっていくといい感じでした。難しいところも簡単なところも一秒で。決して覚えてやるなんて気合い入れなくてもいいですよ。
以下トゥリーナのソナタを例にします。
一楽章は115小節。
二楽章は63小節。
三楽章は163小節。
ぶっ通しで読んだら341秒。5分41秒です。
演奏するよりずっと早いですねw 最初はしんどいかもしれませんが終わりの方になってくると逆にかったるくなって先に先に行きたくなる様になってくると思います。でもここは辛抱して一小節一秒を守ってください。
2 一行を一秒で読む。
一秒で一行をスキャナーで読み取るように読む。左から右にさーっと流すように見てください。
一楽章は27行。
二楽章は13行。
三楽章は27行。
ぶっ通しで読んだら1分7秒。五分の一に短縮されましたw
3 一ページを3秒で読む。
一カ所を見るのではなく全体をぼんやりと3秒眺めてページをめくる。
トゥリーナのソナタは全部で10ページなので捲るのに一秒かかるとして全部で40秒です。
更に短縮されました。
こんなの見ているうちに入るのかと思われるかもしれないですけど、人間は周辺視野というのが働くので見ようとしているもの周辺も無意識に見てしまうようです、
4 毎日繰り返す。
これが一番大切です。繰り返すことで一時的な記憶をしっかりとした記憶として定着させる事。記憶は一度で一気に記憶しようとするよりも、軽く何回も繰り返した方が定着が良くなるようです。
1の課程は初回やるだけで面倒になったので、2と3だけを毎日、朝昼晩と時間のある時にやりました。
それでもトゥリーナのソナタを読むのに必要な時間は
1分47秒+40秒=2分37秒
今回は大曲6つのプログラム。曲によって長い短いはあると思いますが、読むのに必要な時間はだいたい同程度なので
2分37秒×6=15分42秒
大体一回16分くらいで2時間のプログラムの復習が出来ます。
これを上にも書いたように、音出しを始める前からずーっと毎日続けました。
勿論譜読みをしただけでギターを弾けるようにはならないので別にしっかり練習する必要はあります。ではこんなことして何の役に立つのかということなんですが、以下これは役に立つなと思ったポイント。
1 表情記号の配置と意図が良くわかる。
ピアノもフォルテもそれぞれが単独で存在してるわけではなく、それぞれがリンクして初めて意味を持ちます。表情記号なんかもそうですね。これが一小節ずつ追いかけて練習している時は結構見落としがちです。意味が掴めないどころかある事に気がつかなかったりもします。
ざーっと流し読みをしているとこういう表情記号がリンクして存在しているんだなと気付かされる事が多かったです。特に1ページを3秒で読んでいる時によく分かったりしました。部分だけでなく全体を見ることの大切さですね。
2 疲れない。失敗しない。
当たり前ですが練習していると疲れるし、失敗します。
曲を弾き始める時は元気ですが、弾き進めて行くとちょっとずつ消耗していき弾き終わる頃には疲れてます。で悪い事に曲の難所っていうのは大体後半から後ろに配置されてる事が多いんですね。見せ場になるほど難しくなるっていうやつです。
そうなると通して弾くと、元気な時に簡単なところを弾いて、疲れた時に難しいところを弾きがちになってしまいます。それを繰り返してるとだんだん気力が削がれてくるんです。更に続けているとそこに苦手意識が出来て弾くのも億劫になってしまいます。これがまずい。勿論難所はそこだけを取り出して部分練習する必要があるんですけど。
譜読みをしている最中は難しい小節も簡単な小節も同じ一小節ですから、さーっと読み飛ばせます。簡単も難しいも関係なく最後まで読めます。尚かつ失敗はありません。
3 落ちてもリカバーし易い
指記憶の最大の弊害が落ちた時にリカバーが効きにくいということです。特に独習者の方は途中で間違った時に最初からで無いと弾き直せない方がいます。途中から弾き直す事が出来ないんですね。まあ、ここまで極端ではないにしても指で覚えている場合は一カ所が抜け落ちた時にリカバーするのに手間取る方が多いと思います。
ぼんやりとでも全体像を覚えておいて、演奏中にこのページのこの辺りを弾いているという情報がカーナビのように頭に入っていれば落ちた場合でもリカバーが容易になります。
最終的には頭の中で指の配置と楽譜の記憶が同時上映で再生出来るようになれば理想的ですね。これはまた別に練習が必要ですが。
4 毎日全部の曲に目を通せる。
長いプログラムを練習する時には一日に全部をやり通すというのはなかなかにシンドイものがあります。特に大曲を複数入れているプログラムの時は尚更です。全部を通して弾くどころか一日全部の練習時間を大曲一曲に注いでしまうというのも良くある事。
こういう時に駄目なのが、他の曲を練習出来なかったという焦りを持ってしまう事。そういう焦りは何もプラスには働きません。仮に全部の曲を練習する時間と気力が無くても譜面をざっと見るのに時間も気力も必要ありません。ざっと楽譜に目を通して全体像をぼんやりと把握しておくだけでも心の余裕と記憶の安定感が大分違うなと感じました。
さて長々と譜読みの方法と利点を書き出してみました。
それと平行してギターを使った練習も行ったのですが、それはまた次回に。
完全に上手くいったという感じではなくまだまだ試行錯誤段階ですが、思った事、感じた事をメモしておきます。
・楽譜をよく見る。
暗譜をするに際して最も大切だなと感じた事はこれです。楽譜をよーく見る。
暗譜で演奏するとなると当然演奏時には楽譜を置きません。そうなると
”一刻も早く楽譜を見ずに演奏出来る様にならないといけない”
とついつい思いがちですが、これが一番大きな落とし穴だと思います。
"練習時には必ず譜面を目の前においておく。"
これを心がける様にしました。
一晩でベートーベンのシンフォニーを全部暗譜で指揮する”ベートーベン振るマラソン”という荒行をやってのけた指揮者の岩城宏之さんがピアニストのルービンシュタインとの思い出を記した本を読んだ事があるのですが、それがとても面白かったです。確か”楽譜の風景”という書籍だったと思うのですが…お時間があったら是非読んでみてください。
このルービンシュタインさんはちょっと尋常でない能力の持ち主で、いつ何処で誰と何を食べてどんな会話をしたのか、とかそんな他愛のないことでもしっかりと覚えていたらしく、楽譜なんかも一回見ただけで覚えてしまったとか…そんなルービンシュタインさんが岩城さんに語った内容は、
「音楽は楽譜を見て頭の中にフォトコピーして覚えるのが一番だ。音による記憶も、指による記憶も確かな物じゃない。」
とのことでした。
生徒さんとのレッスンをしている時に思うのは、みんなある程度楽譜を覚えると楽譜を見なくなりがち、ということです。左手ばかりを見る様になってしまうんですね。ある程度弾ける様になると楽譜の記憶を手の記憶にすり替えてしまうという事です。
勿論手で覚えるという事も必要だと思います。でもそこに楽譜の記憶も残っていないといけない。
美山でステファノ・グロンドーナさんがレッスン中に良く言っていた事ですが。基本的に
「指はバカ」です。
これは、”何もイメージせずに指に任せて弾いてもそれは音楽ではない、必ずイメージを持ってからそれを実現させる為に指を動かさなければいけない。”という意味なんですが、それプラス、"指だけに頼っている記憶は何処かで必ず危険を伴う。"という意味もあるのじゃないかなと思います。
私も昔は指だけの記憶で弾いていたので楽譜は覚えてしまうと全く見なかったです。ただ今考えるとそれは指の記憶を覚えていただけで、音楽として覚えていたわけではないんですね。周りに書かれてる音楽記号なんてほとんど意識すらしてなかったです。
それでいいわけがないなと。
ルービンシュタインの様な特殊な才能を持った方の領域には達する事は無理でしょうが、自分なりにフォトコピー出来ないかなと考え色々と試行錯誤してみました。記憶術なんかの本も何冊か漁ってみました。その何冊かの本に共通して書いていた事は
”記憶する為には繰り返しが大切”
という当たり前といえば当たり前の事でした。
ある本によると、初日に100の事を覚えたとしてその記憶は翌日には24まで落ち込んでしまうそうです。一週間後には21以下にまでなってしまうとか。それを例えば三日後に復習する様にすれば取り戻した記憶の落ち込み方は大きく減少します。これを繰り替えしているうちに曖昧だった記憶がどんどんと定着して最終的にはしっかりと頭に取り込まれて行きます。この復習の頻度を多くすれば記憶の定着も早くなって行きます。
それじゃ単純に弾く回数を増やせばいいのか…いやそれはしんどいです。毎日毎日テデスコのソナタを最初から最後まで弾くのはしんど過ぎます。やった方なら良くわかると思いますが、組曲やソナタを通して一回弾くだけでかなり疲労します。
というわけでこれを譜読みに応用しました。楽器を持たずに楽譜だけを見る正に”譜読み”です。勿論音を出す練習も平行して行いましたが、この譜読みは音出しをする以前からそれこそ演奏の当日になるまでずっと続けました。以下その手順です。これが誰にでもいい方法なのかは分かりませんが。なかなか役に立つ方法じゃないかなと思いました。
1 一小節を一秒で読む。
頭の中で写真のシャッターをきるように一小節を頭に張り付かせるイメージで。時計の秒針の音を聞きながらやっていくといい感じでした。難しいところも簡単なところも一秒で。決して覚えてやるなんて気合い入れなくてもいいですよ。
以下トゥリーナのソナタを例にします。
一楽章は115小節。
二楽章は63小節。
三楽章は163小節。
ぶっ通しで読んだら341秒。5分41秒です。
演奏するよりずっと早いですねw 最初はしんどいかもしれませんが終わりの方になってくると逆にかったるくなって先に先に行きたくなる様になってくると思います。でもここは辛抱して一小節一秒を守ってください。
2 一行を一秒で読む。
一秒で一行をスキャナーで読み取るように読む。左から右にさーっと流すように見てください。
一楽章は27行。
二楽章は13行。
三楽章は27行。
ぶっ通しで読んだら1分7秒。五分の一に短縮されましたw
3 一ページを3秒で読む。
一カ所を見るのではなく全体をぼんやりと3秒眺めてページをめくる。
トゥリーナのソナタは全部で10ページなので捲るのに一秒かかるとして全部で40秒です。
更に短縮されました。
こんなの見ているうちに入るのかと思われるかもしれないですけど、人間は周辺視野というのが働くので見ようとしているもの周辺も無意識に見てしまうようです、
4 毎日繰り返す。
これが一番大切です。繰り返すことで一時的な記憶をしっかりとした記憶として定着させる事。記憶は一度で一気に記憶しようとするよりも、軽く何回も繰り返した方が定着が良くなるようです。
1の課程は初回やるだけで面倒になったので、2と3だけを毎日、朝昼晩と時間のある時にやりました。
それでもトゥリーナのソナタを読むのに必要な時間は
1分47秒+40秒=2分37秒
今回は大曲6つのプログラム。曲によって長い短いはあると思いますが、読むのに必要な時間はだいたい同程度なので
2分37秒×6=15分42秒
大体一回16分くらいで2時間のプログラムの復習が出来ます。
これを上にも書いたように、音出しを始める前からずーっと毎日続けました。
勿論譜読みをしただけでギターを弾けるようにはならないので別にしっかり練習する必要はあります。ではこんなことして何の役に立つのかということなんですが、以下これは役に立つなと思ったポイント。
1 表情記号の配置と意図が良くわかる。
ピアノもフォルテもそれぞれが単独で存在してるわけではなく、それぞれがリンクして初めて意味を持ちます。表情記号なんかもそうですね。これが一小節ずつ追いかけて練習している時は結構見落としがちです。意味が掴めないどころかある事に気がつかなかったりもします。
ざーっと流し読みをしているとこういう表情記号がリンクして存在しているんだなと気付かされる事が多かったです。特に1ページを3秒で読んでいる時によく分かったりしました。部分だけでなく全体を見ることの大切さですね。
2 疲れない。失敗しない。
当たり前ですが練習していると疲れるし、失敗します。
曲を弾き始める時は元気ですが、弾き進めて行くとちょっとずつ消耗していき弾き終わる頃には疲れてます。で悪い事に曲の難所っていうのは大体後半から後ろに配置されてる事が多いんですね。見せ場になるほど難しくなるっていうやつです。
そうなると通して弾くと、元気な時に簡単なところを弾いて、疲れた時に難しいところを弾きがちになってしまいます。それを繰り返してるとだんだん気力が削がれてくるんです。更に続けているとそこに苦手意識が出来て弾くのも億劫になってしまいます。これがまずい。勿論難所はそこだけを取り出して部分練習する必要があるんですけど。
譜読みをしている最中は難しい小節も簡単な小節も同じ一小節ですから、さーっと読み飛ばせます。簡単も難しいも関係なく最後まで読めます。尚かつ失敗はありません。
3 落ちてもリカバーし易い
指記憶の最大の弊害が落ちた時にリカバーが効きにくいということです。特に独習者の方は途中で間違った時に最初からで無いと弾き直せない方がいます。途中から弾き直す事が出来ないんですね。まあ、ここまで極端ではないにしても指で覚えている場合は一カ所が抜け落ちた時にリカバーするのに手間取る方が多いと思います。
ぼんやりとでも全体像を覚えておいて、演奏中にこのページのこの辺りを弾いているという情報がカーナビのように頭に入っていれば落ちた場合でもリカバーが容易になります。
最終的には頭の中で指の配置と楽譜の記憶が同時上映で再生出来るようになれば理想的ですね。これはまた別に練習が必要ですが。
4 毎日全部の曲に目を通せる。
長いプログラムを練習する時には一日に全部をやり通すというのはなかなかにシンドイものがあります。特に大曲を複数入れているプログラムの時は尚更です。全部を通して弾くどころか一日全部の練習時間を大曲一曲に注いでしまうというのも良くある事。
こういう時に駄目なのが、他の曲を練習出来なかったという焦りを持ってしまう事。そういう焦りは何もプラスには働きません。仮に全部の曲を練習する時間と気力が無くても譜面をざっと見るのに時間も気力も必要ありません。ざっと楽譜に目を通して全体像をぼんやりと把握しておくだけでも心の余裕と記憶の安定感が大分違うなと感じました。
さて長々と譜読みの方法と利点を書き出してみました。
それと平行してギターを使った練習も行ったのですが、それはまた次回に。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-27 19:54
| おんきち
|
Comments(0)

VEGA120終了しました。
120分の丸暗譜という今までにやった事の無い事でどうなるかと思いましたが、なんとか弾ききりました。最後まで温かく聴いてくれた皆さんに感謝感謝です。
この企画に挑戦しようと思ったのは元々暗譜が苦手だったということがあります。演奏する時にいつも暗譜の状態が曖昧な感じがありそれが演奏の妨げになってるなと思っていたので、これを機会に自分なりの暗譜方法を確立したいというのが第一にありました。
プログラムも思い切って負荷の高い物に設定してみました。普段のコンサートではこういうプログラムが組みにくいというのもありましたが、難易度的にも高いもので今現在の限界値を引き上げたい、今まであまり接する事のなかったトゥリーナ、タンスマン、テデスコをこの機会に勉強してみたいという欲張った考えもありました。
今年に入ってから二月までソロリサイタルの準備に追われて、バッハ、ポンセ以外の曲は駆け足で仕上げなければならず、本番前の一週間はなかなか大変でした。ちょっとパニック寸前でしたね。
期せずして仕上がりの状態が良くない物を本番に如何に開き直って演奏するのかということも大きなテーマになってしまいました。ただこれはとても大きな経験になりました。
最後に改めて120分をおつきあい頂いたみなさんに感謝です。
一人で根を詰めて練習していると何のために練習しているのかが分からなくなる時があります。そういう時に聴いてくださるお客さんの顔をイメージして練習出来れば、何の為に何をしているのかという事が改めて明確になります。聴いてくれる人のことを考えて客観性を獲得出来るというか。
今回は特に聴いてくれたみなさんの存在が無ければ最後まで弾き通す事は出来なかったと思います。本当にありがとうございました。最後に素晴らしい勉強の場を提供してくれたVegaMusikの堤純子さんに改めて感謝です。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-25 06:36
| おんきち
|
Comments(0)
東北関東大震災の迷子動物情報の掲示板
震災で行方が知れなくなってしまったのは人間だけじゃないんですね。
家族同然のペットが行方不明になってしまった方々のための掲示板です。
一刻も早く飼い主の元に帰れるといいのですが…
久しぶりに実家に居る猫に会いたくなりました。
震災で行方が知れなくなってしまったのは人間だけじゃないんですね。
家族同然のペットが行方不明になってしまった方々のための掲示板です。
一刻も早く飼い主の元に帰れるといいのですが…
久しぶりに実家に居る猫に会いたくなりました。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-21 00:15
|
Comments(2)
この度の巨大地震の被害を受けられた方々に心よりお見舞いを申し上げます。
暗いニュースばかりが報道される中、希望に溢れる動画を見つけたので紹介します。
地震から42時間、救助されての第一声、
大変なときだからこそ笑顔でありたい、言うのは容易いけどこれほどの災害の直後になんて素晴らしい笑顔を見せてくれるんだろう…本当に強い方なんだろうなと思います。
周りの人に力を与える素敵な笑顔をありがとうございます。
暗いニュースばかりが報道される中、希望に溢れる動画を見つけたので紹介します。
地震から42時間、救助されての第一声、
大変なときだからこそ笑顔でありたい、言うのは容易いけどこれほどの災害の直後になんて素晴らしい笑顔を見せてくれるんだろう…本当に強い方なんだろうなと思います。
周りの人に力を与える素敵な笑顔をありがとうございます。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-18 14:34
| 雑記
|
Comments(2)

突然ですがコンサートのお知らせです。
VEGA120とは京阪神で活発に活動されている堤純子さんが主催するベガムジークで開催されている名物企画です。内容は単純に120分丸暗譜でコンサートをしようというものなのですが、来る3/24にこのマラソン企画に挑戦する事になってます。
プログラム
バッハ/プレリュード・フーガ・アレグロ
モンポウ/コンポステラ組曲
トゥリーナ/ソナタ
タンスマン/カヴァティーナ組曲(ダンサポンポーサ付き)
ポンセ/ソナタ第三番
テデスコ/ソナタ ボッケリーニを讃えて
体力、暗譜力の限界に挑戦、ついでに新規レパートリーの開拓と今まで勉強した曲の棚卸しという一石三鳥を狙ったかなり無茶なプログラム構成になってます。考えた時には楽しかったのですが、今、帳尻合わせで涙目で練習中です。
挑戦という要素が強く、聴く方もかなりしんどいのではないかと思いますが入場料は無料。まだ若干名参加出来るようなので、セゴビアレパートリーの名曲を浴びる様に聴いてみたいという熱心なクラギファンの方がいらっしゃいましたら、今週中にメール等でお問い合わせください。
ちなみに会場のベガムジークサロンは、大阪府豊能郡豊能町の光風台というところにあります。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-14 08:10
| Concert information
|
Comments(2)

二人のギタリスト、加藤奏さん、等々力成史さんのジョイントコンサートを聴きに京都の法然院まで行ってきました。
彼らと知り合ったのは確か第二回の美山音楽祭だったんじゃないかなと思います。あれから5年、ずっと勉強を続けていたのは知っていたしちょくちょくと演奏を聴く機会はあったんですが、彼らの本格的なコンサートを聴くのはこれが初めてということでスゴく楽しみにしてました。

プログラム
ダウランド/ファンタジー
バッハ/リュート組曲第一番
ソル/練習曲集 Op.31、Op.35より
(等々力ソロ)
休憩
トローバ/ソナチネ
ヴィラロボス/5つのプレリュード、ショーロスNo.1
(加藤ソロ)
おそらくしっかりしたコンサートは今回が初めてだったと思うのですが、ガチンコのプログラムです。
良く勉強しているのが分かったし、このコンサートにかける彼らの意気込みもしっかりと伝わってきました。
等々力さんは丁寧な音の処理が好印象だったし、緩楽章での歌い方や和声感のセンスがとても素晴らしかったです。加藤さんは熱のある独特な歌い方、そして大曲をねじ伏せる強い意志とステージでの存在感が素晴らしかった。時間を感じさせない熱演だったし、また成長した次の姿を見てみたいと思わせてくれるコンサートでした。

冒頭、等々力さんが今回の震災に遭われた方々へのお悔やみとコンサートに対する思いを話してくれました。
「このような災害が起きているなかで音楽をしていていいのかという思いもあるが、このコンサートに来てくれた人たちに少しでも力を与えられる様な演奏をしたい」
この言葉に本当に励まされました。
悲惨な災害の情報が溢れかえるなか、呑気に音楽なんてやってていいのかという思いがありギターを触るのが億劫になってしまう瞬間があったんですが、今自分のやれる事が何かと問い返せばしっかりと自分の日常生活を送ることくらいなのじゃないかなと思います。
音楽家なら音楽をやる。演奏を聴いてくれた人に、レッスンを受けてくれる生徒さんに力を与える事が出来る様に努力する。それが自分たちの本分です。そして余裕があれば少しでも募金すると。
今回のコンサートの副題は”音に託す希望のリレー”でした。
ソロとソロを繋ぐリレーという意味もあるのでしょうが、コンサートを聴いてくれた人へ、その後の生活での活力になって欲しいという思いもあったと思います。彼らから貰ったエネルギーを力に変えてそれを自分も誰かに手渡せる様に頑張って行きたいと思います。
このコンサートを開催してくれた二人に感謝です。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-13 23:54
| おんきち
|
Comments(0)

ライブの打ち合わせも兼ねて、三ノ宮のPia Julienに行ってきました。
窓から見える三ノ宮の夜景がとてもキレイ。いい雰囲気です。
この日は森口綾子さんのソロ、平石裕香さんの伴奏のシューマンのピアノコンツェルトでした。
今月の23日にシンフォニーホールで大阪センチュリー交響楽団との本番を控えているということで、テンションの高い熱演でした。生でこの曲を聞いたのは初めてだったけど素晴らしかったです。本番、聞きに行けないのが残念…
大阪センチュリー交響楽団のホームページ
コンサート情報の"平成22年度日演連推薦/新人演奏会"
興味のある方は是非聞きに行ってみてください。
伴奏の平石さんも電子ピアノで健闘してましたが、音域もダイナミクスも狭いのでやっぱり苦戦しているようでした。生のピアノでの連弾だったらもっと面白かったでしょうね。この曲のオケのお話とか色々と面白い話が聞けて楽しかったです。
〜〜〜
Pia Julienでのナイトライブが4/16(土)に決まりました。
昨年からよくご一緒している藤村良くんと二重奏とかソロとかをやります。
詳しい事が決まり次第また書きますね。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-09 06:48
| おんきち
|
Comments(0)

3/6に茨木のきらめきホールで開催された北口功氏のギターリサイタルに行ってきました。
今回の使用ギターは松村雅亘氏2000年製作のもの
プログラム
ソル/モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲
ソル/グランド・ソナタ第2番
アンダンテ・ラルゴ
アレグロ・ノン・トロッポ
主題と5つの変奏
メヌエット・アレグロ
バッハ/テンポ・ディ・ボレアとドゥーブル
(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番より)
休憩
シューベルト/セレナーデ、仮の宿、郵便馬車(メルツ編)
武満徹編曲「12の歌、地球は歌っている」より
オーバー・ザ・レインボウ(アーレン)
サマータイム(ガーシュイン)
早春賦(中田章)
イエスタデイ(レノン&マッカートニー)
ヘイ・ジュード(レノン&マッカートニー)
星の世界(コンバース)
ロンドンデリーの歌(アイルランド民謡)
茨木市の教育委員会が主催する無料のコンサートシリーズも今回で5回目になるようです。
毎回多くの観客が会場に集まりますが、今回はいつになく盛況で予約の段階で満席になってしまい申し込みを途中で打ち切ったとか。
プログラム後半は良く知られた歌もの。来られる方が一般の方が多いしこういう選曲はウケがいいのじゃないかなと思います。とはいえメルツ編も武満編も難易度高いので弾く方からみればかなり厳しいプログラム。しかし強靭な技術とそれ以上に豊かな歌心でだれることなく最後まで弾ききったのは流石でした。
特に良かったと思ったのはシューベルトの仮の宿。ギターにアレンジするにはちょっと壮大過ぎる歌じゃないのかなと思って弾くのを敬遠してたんですが、ギターに妥協せず大きなスケールの歌を見事に歌いきってくれました。ギターでもああいう表現が出来るんだな…勉強になりました。
ただコンサートの白眉だと感じたのは前半のソルの第2グランドソナタ。全楽章演奏すると20分を越えてくるソルの作品の中でも最も規模の大きな作品。技術的にも音楽的にも大変な難曲でまずライブで聞く機会のない曲です。これが本当に良かった。
特に三楽章の変奏曲は録音、ライブ含めて初めて聞く曲だったのですが。主題と変奏のアイデアや展開のユニークさ、構築性はいい意味でギター離れしていてまるでベートーベンの様で驚かされました。
演奏会後の茶話会で北口氏とお話をする機会があったのですが、ピアノにとってのベートーベンのピアノソナタやバイオリンにとってのバッハの無伴奏作品のように、氏にとってソルの作品はクラシックギターにとっての永遠の課題曲であるのだとか。
"ソルの作品を美しく再現できるギターであって欲しいし、演奏家でありたい。"
これは製作家にとっても演奏家にとっても決して楽なハードルではないと思いますが、この日のギターもまた演奏もそのハードルを充分に越えていたのではないかなと思います。
作曲家ソルの実力を改めて思い知らされた会になりました。
19世紀ギターを手に入れてからやろうってちょっと敬遠してましたが、少しずつ勉強し直してみることにします。
▲
by onkichi-yu-chi
| 2011-03-06 22:05
| おんきち
|
Comments(0)
1