d0077106_22181733.jpg先日の11月22日、大阪のザ・フェニックスホールで行われた大萩康司のギターリサイタルに行ってきました。

そもそも大阪でリサイタルが開かれる事さえ知らなかったのですが、知り合いから「行けなくなったから代りに行ってくれないか」との有難い申し出があり喜んで大阪まで行ってきました。

フェニックスホールは大阪駅から徒歩10分程の場所にある、キャパ200人程の感じのいいコンサートホールで、過去にもアサド兄弟や関西の若手ギタリストのコンサート等で使用されていて何度か聞きにきました。

写真では舞台の後ろ側は反響板のようになっていますが、この板は可動式になっていて、板を動かすと背後から大阪の夜景を望めるようになっていてなかなかシャレています。

当日のプログラムは
バッハ:プレリュード・フーガ・アレグロ
武満徹:翼(福田進一編)
    フォリオス

〜休憩〜

ヴィラロボス:五つのプレリュード
ジスモンチ:変奏曲
アサド:アクアレル

今回一番楽しみにしていたのはアサドのアクアレルです。福田進一の同名のアルバムは学生時代どれだけ聞いたかわからない。とんでもなく難しく、また難解な響きで、とにかく難しくややこしくすることだけが作曲者の目的じゃないかと思ったりもしますが、難解な中にも南米音楽の持つ強力なリズム感や野性味、ウイット、そして透き通る様な透明感がうまく表現されていてとても好きな曲です。

また、広島時代の先生が日本初演をし、今の師匠がコンクールのゲスト演奏でこの曲を弾いてそれを切っ掛けに習おうと思ったので、僕にとって縁の深い曲でもあります。d0077106_22485629.jpg
コンサートは流れる様なバッハから始まったけどこの曲は演奏者にとってもまだまだ実験段階にあるような感じを受けました。奇麗だけどまだまだそんな物じゃないだろうと思っていたら、次の武満からどんどんと調子を上げてくる。フォリオスも素晴らしかったけど、心に残ったのは「翼」だった。混声合唱によるもの、歌とピアノによる演奏は聞いていたけど、初めて聞いたギターによる「翼」が一番好きかもしれない。これは演奏者を褒めるしかないなあ、あのアレンジは相当難しいと思うけど、難しさなんで毛程も感じさせなかったし。

後半は南米音楽によるプログラム。過去、何人もの名ギタリストにより演奏され、すでに手垢のつきまくっているヴィラロボスも独自の感性で新しい曲に生まれ変われさせていたし、ジスモンチの行き過ぎた格好良さから生じてくるバカバカしさも見事に表現されていた。そして一番楽しみにしていたアクアレル。

プログラムには明快なメロディーで親しみやすい曲と書いてあり、おいおいマジかいなと思いましたが、演奏を聴いていて納得しました。とにかくノリがいい、思わず足を踏み鳴らしそうになってしまうくらいリズミカルでこの曲が持っているサンバの様な舞曲の要素がしっかりと表現されているんだこれが。今までこの曲を聴く時はその難しさをいかにして切り開いて行くかというサーカス的な視点に眼がいってましたが、純粋に音楽として聞かせるその腕前に改めて驚かされました。

大萩康司の魅力は繊細かつ多彩な音色。それも油絵の様な多彩さではなく、水墨画や水彩画のように音の濃淡で遠近法や光と影を表現出来るところにあるんじゃないかなと思いますが、そこに南米物で培った強力なリズム感が加わったことにより、今日の後半のプログラムはまさにハマり役。今、最も彼自身を表現出来るプログラムじゃなかったかなと思います。楽しかった〜。

この日一番ハマったのは曲の間のトーク。後半の頭にプログラムの説明があったんですが、アクアレルの説明の件で

「この曲は無窮動の音の連なりが何処かに向かって・・・・・何処かにつくんです。たぶん」

そのトークの隙間が思わずツボに入ってしまいました。トークの方は決してうまい訳ではないんだけど、その言葉の合間合間の空隙に観客が耳をそばだててるのが良くわかる。次は何を言うんだろうって観客を引きつけてるんだよな。その間合いの魅力は彼の演奏の魅力にも通じている様な気がします。

d0077106_2346310.jpg名曲集の素晴らしいアンコールの後、サイン会の会場ではサインを求める観客の長蛇の列。若い女性もいっぱいならんでて、こんだけウマくてイケメンならそりゃもてないはずないよなあと、ちょっと色々と文句も言いたくもなりましたが、幸せな気持でコンサート会場を後にしました。
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# by onkichi-yu-chi | 2006-11-24 23:43 | おんきち | Comments(3)
d0077106_8324597.jpgに2ヶ月振りの更新です。放置プレイにも程がある・・・申し訳ありません。

NHKのスーパーピアノレッスンでお馴染みのジャン=マルク ルイサダのピアノリサイタルに出掛けてきました。

ショパンの曲が題材だったスーパーピアノレッスンでは生徒の演奏を聞いたあと、「大変素晴らしいですね!でも私ならここはこう弾きますね。」とか言って同じピアノを使っているとは考えられない程の多彩な音色を引き出していてビックリさせられました。

そんなお方が姫路までやってくることなんてそうはないことなのでこのチャンスを逃す訳にはいかず、自分のレッスンを終えた後、片道8キロの道をチャリでかっ飛ばして会場まで向かいました。

会場は姫路パルナソスホール。姫路市内では最も音響もよく、キャパシティーも大きく、クラシックのコンサートには最適なホールで、年に数回海外から一流の演奏家を招いてコンサートを開いています。

が、神戸や大阪程クラシックファンが多い訳ではない姫路でのコンサート、開いたはいいが閑古鳥が鳴いているなんて事もよくあります。3年程前、バイオリニストのカントロフがピアニストの上田晴子さんとコンサートを行いましたが、キャパ1000人弱のホールにお客さんは50人程。演奏は素晴らしかったのに・・・あれからカントロフはこなくなりました(当然か。)d0077106_23102041.jpg

今回のルイサダもカントロフの二の舞になるんじゃないかと心配しましたが、TVの影響か、それともやっぱりピアノは強いってことだろうか、ホールはほぼ満員で飛び込みで取った当日の席もほぼ売り切れ状態。このホールがMAX近くまで埋まったのは初めて見ました。公演予定を見ると関西での演奏は意外にもここ姫路だけ。京都や大阪から来た人もいるのかもしれないなあ。


本日のプログラムは

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ《悲愴》
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番

〜休憩〜

チャイコフスキー:無言歌ヘ長調、サロン風マズルカ
グラナドス:ロマンティックな情景よりマズルカ
ウェーバー:舞踏への勧誘
バルトーク:ルーマニア歌曲 第一番
プーランク:ワルツ ハ長調
ショパン:ワルツ第2番 変イ長調
     ワルツ第3番 イ短調
     ワルツ第4番 ヘ長調
プログラムにInvitation to the danceと銘打ってある通り、前半の二つのソナタを挟んだ後半は舞曲系の小品でのプログラミングになってます。

会場に現れて、ピアノに座るやいなや演奏開始、その一音ですーっと観客を引込む辺りが流石です。悲愴の出だしのgraveが素晴らしかった。パーンと音を放りだして、え?そこまで引き延ばすのってところまで音をキープした後にそこしかないというポイントに見事に着地する。どんなテンポルバートをとっても音楽的に正解というポイントは一点しかないとは言うけれど、これほど自由に歌いながらそのポイントをしっかり抑えてくるあたりが素晴らしい。

ピアノレッスンで取り上げていたショパンはより本人の気質にあっているんだろう、ピアノの上で表現される歌の素晴らしさにあっという間に時間がたってしまった。歌心ももちろんなんだけど、細部に渡る心配りも行き届いていて、埋もれがちな対旋律がハッキリと浮き上がって音楽の構造もはっきりと示されている。あんまり気持よすぎてうとうとしてしまったけど。

小品を集めた後半も一曲一曲の特徴をはっきりと掴みながら、洒落っ気にとんだ演奏でこれもまたあっという間に終了。時間の長さをほとんど感じさせなかったよ。アンコールにショパンのノクターン《遺作》他一曲を弾いてお開きになったんですが、面白かったのがこのあとでした。

まだアンコールをねだる観客に対してお辞儀をしてピアノを弾くようなそぶりを見せた後、椅子を楽屋にもって帰ってしまった。もういいでしょ、みたいな(w 

コンサート後のアンコールってなんか惰性で要求しちゃってるような感じを受ける時があるんですが、受けるも受けないも演奏者の自由だと思います。はっきりと断りながらも嫌な感じを与えずに笑いまでとってしまうあたりエンターテイナーですね、あれがエスプリってやつでしょうか。
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# by onkichi-yu-chi | 2006-11-22 00:11 | おんきち | Comments(0)

プロフィール

クラシックギターを徳武正和、金谷幸三、両氏に師事。
これまでに福田進一、ステファノ・グロンドーナ、ティモシー・ケイン、岩崎慎一、松永一文、今村泰典、マルコ・メローニ各氏のマスタークラスを受講。
通奏低音を佐野健二氏に師事。

第1回から4期連続で美山ギター音楽祭に参加、
神戸の元町ミュージックウイーク、第10回、第12回、第13回、弟17回姫路ミュージックストリートに参加。
姫路市立美術館、書写の里美術工芸館、兵庫県芸術文化協会等に招かれて演奏を行い好評を博す。

定期的にコンサートを主催し、独奏だけでなくバイオリンやフルート、歌、朗読の伴奏なども積極的に行なっている。渡辺悠也クラシックギター教室主宰
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これまでの活動歴
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# by onkichi-yu-chi | 2006-09-11 22:23 | Profile | Comments(0)

long long time ago....

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最近、週に一度ほど母校の姫路東高校のギタマン部の指導に行ってます。高校を卒業して早11年、今の現役の人達とは干支が一周して同じだったり平成生まれだったり、、時代を感じます。

東高のギタマン部は最近になって復活したのだけど、高校に入ってから楽器を触ったという人が大半、楽器も十分に揃っていない、という状態であんまり活発な活動をしていない。大きな大会でバリバリと賞を狙うという感じではなくて、放課後をまったりと過ごしている集団です。(それはそれで贅沢な時間の使い方かもしれない)

以前は月に一度くらい顔を出したり出さなかったりという程度だったけど、最近は面白くなってきてよく顔を出す様になってきた。

個人個人の力量をみるとまだまだ不足しているんだけど若いせいか、もの凄い爆発的な成長を見せてくれる。本番二ヶ月前くらいにみた時は「なんじゃこりゃ?大丈夫かな。」と首を傾げる様な演奏だったのが本番一週間前くらいにはなんとか聞ける様な形にまでもってくる。今までは指導者もなく練習もしたりしなかったりと継続的に活動していなかったんだけど。しっかりと面倒を見たらいったいどれくらい成長していくのか、、、見守るのが本当に楽しみです。

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# by onkichi-yu-chi | 2006-09-11 22:03 | おんきち | Comments(0)
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この前の9/3の事ですが、芦屋の山村サロンにて行われた大井浩明クラヴィコードリサイタルに行ってきました。

大井さんの事は師匠の金谷幸三から紹介され、師匠の代りに行ってきた二年前の京都でのコンサートはちょっとしたカルチャーショックを与えてくれました。二台のチェンバロを行ったり来たりしながらバロックと現代の作品を縦横無尽に料理し、満場のお客さんの拍手にアンコールでネスカフェゴールドブレンドであっさりと答えあっけにとられたのを良く覚えています。

今回の会場の山村サロンは芦屋駅を降りてまさに徒歩三分、駅から陸橋でダイレクトに会場入り。まるで能の舞台のようなホールは大きさは小さめ、だけど音響はデッドでもなく響き過ぎでもなく。こんな会場が姫路駅近くにあればいいのに。

d0077106_1775223.jpgクラヴィコードは聞くのも見るのも初めてだけど、まずはその音量の小ささにビックリ「ちっちゃ!」、壁むこうのリハーサル室から聞こえてきた音かと思った、でも耳が馴れてくるとその小さな音量からは想像もつかない残響の深さ、表現力の多様さに驚かされる。これは今まで聞いてきた鍵盤楽器のイメージよりもずっとギターよりの響き、それも19世紀ギターとかテオルボの様な。それぞれの音が独立した響き、方向性を持ちながら、全体としては不思議に調和を形成するという特性は19世紀ギターにも共通するなんともいえない魅力です。普通のピアノなら多少のミスタッチでも鳴っているだろう音が「バスン」とまさにフレットを押さえ損ねた様な音をたてるとこもまさにギターです。親近感湧きます。

バッハがリュートのために書いたリュート組曲はリュートのためには余りにも難しくて(コユンババ調弦でハ短調、ホ長調弾こうってのがムリがある。)本当にリュートのために書かれたんか?というのはよく言われているけど、ひょっとしてこの楽器で作曲されたんじゃないかなと思った。いつかこれでリュート組曲全曲演奏会を開いて欲しいです、大丈夫です、それなりにお客さんは入ると思います、多分。

バッハ後期の24調を巡る旅。前半はちょっと心構えが足りなかったせいか心地よくうとうとしてしまうこともあったけれど、段々と耳が形式になじんできたのか、後半になるにつれてグイグイと引きつけられる。違う調に移る度にさて次はどんなことやってくれるのかと。

パンフレットにはお笑いと音楽の類似点について書かれているけれど、バッハのフーガってのは正にコントではないか。最初に主題が提示されそれを元にどんどん話を膨らます。大喜利に見せかけ、実は何度もリハーサルを繰り返している笑点みたいなやつもあれば、思いつきで適当に話し始めたものの収集がつかなくなり「チャンチャン」で無理矢理シメてみたり。

印象に残ったのは後半の変イ短調、聞いていて何処に行くのやら、なんだか気持悪くなった。あと変ロ長調は聞いていてBWV998「プレリュード・フーガ・アレグロ」を想起させられた、なんだか曲の展開や材料が似通ってる気がする。しかしピアノは初心者の段階で「インベンションとシンフォニア」とか「平均律」とかで多様な調やフーガの形式に親しめるのは羨ましい、ギターでやろうとしたらどうしても身構えてしまうし。でもあまりこの曲集を楽しそうにやってる人はお目にかけないなあ、これを子供に楽しませて弾かせるのは相当大変だとは思うけど。

演奏会後、大井さんが会場に現れ少し話をする機会を持ててその中で「最近若手のギタリストのバッハを聞いたけどあれはモダンの演奏だったね〜」との話をしたんだけど、それはモダン楽器での演奏だったからか、それともその表現がモダンだったのかなと(おそらく後者のほうでしょうが)と少し疑問に思いました。古楽だろうとモダンだろうと広島焼きだろうと食ってみておいしけりゃいいじゃんとつい思ってしまう、「古楽にも興味あります」と言ってしまいがちな者の一人としては、古楽とモダンとの決定的な違いが分からず、頭を捻り首をかしげ乍ら家路に着きました。ひょっとしてそういうところが首根っこを押さえつけられてこっち側にも窓があるということに気付かされた大井さんの留学の遺産なのだろうかな〜などと。

二回しか聞いた事はないけど、いつも考えさせてくれる大井さんの次のコンサートがとても楽しみです(チャンチャン)
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# by onkichi-yu-chi | 2006-09-07 18:11 | おんきち | Comments(5)

姫路のギタリスト渡辺悠也のblog


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