北口功@バロックザール

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聞きに京都まで行ってきました。
当日のコンサートのサブタイトルは”バッハ作曲無伴奏ヴァイオリンのための作品集”

アンダンテ(無伴奏ヴァイオリンソナタニ番より)
無伴奏バイオリンパルティータ第一番

休憩

無伴奏バイオリンソナタ第一番
無伴奏バイオリンパルティータ第三番


この大曲をブーシェ、松村という二台の銘器を使って弾き分けるという硬派で骨太なプログラム。

ジャスラックの著作権が一切かからないというささやかな利点はありますが、このプログラムで本番に挑むのはかなりの度胸と準備が必要で、北口先生も内心期するものがあったのではないかと思われます。


前半はブーシェを使っての演奏。冒頭のアンダンテから豊穣な歌がブーシェから溢れてきます。パルティータの一番も含め相当に引き込まれてきたプログラムだと思います、破綻もなく見事に弾かれていましたが、演奏者のコンサートへの意気込みや演奏のコンディション、会場の聴衆の温まり具合などが上手く合ってなかったかも知れません。最初からフルスロットルでエンジンを踏み込んだらギアが上手く噛み合わず少し空回ったというか…ただプログラムがプログラムだけにどうしようも無い事なのかも知れませんが。

前半ではパルティータ一番のコレンテのドゥーブル、そして単体でも良く弾かれていたテンポ・ディ・ボレアとドゥーブルが良かったです。決してテクニックを売りにする演奏者ではないのですが、こういう無窮動な作品で真価を発揮しているように感じるのは不思議な気がします。

後半は松村に持ち替えてのソナタ一番。バッハの無伴奏作品の中でも少し古風な作品に感じられると以前仰っていましたが、冒頭の和声からその意味が伝わってきた気がします。前半のブーシェも素晴らしい音でしたが、長年弾き続けてそしてこの楽器に育てられたと仰っていた通り、馴染んだ自分のホームに帰ってきたというか安心して聞けるし躊躇い無く踏み込める感じがありました。

そしてもう一度ブーシェに戻ってパルティータ三番、演奏者も会場も十分に暖まったところでブーシェもそれに応えたのか、目の前で素晴らしく鳴っていた松村に触発されたのか素晴らしい音が会場に広がって行きました。このパルティータはどの曲が良かったというのは無くて、組曲全体で素晴らしいと感じました。見事に始まって見事に終わって、ああ…バッハを堪能出来たという満足感。

この二台の楽器は勿論どちらも素晴らしく高いレベルの楽器なのですがこうやって聴き分けるとその違いが良く伝わってきます。松村は長年北口先生が引き込んできたからかも知れませんが、演奏者に寄り添ってというか演奏者に対して焦点を当てているように感じましたが、ブーシェはもっと大きな芸術的なモノに目を向けていて演奏者がそっちを向くのをじっと待っているような…抽象的で申し訳ありません。あとブーシェは目を瞑って聞いていると音の出所が何処からなのか一瞬分からなくなる時がありました。演奏者の遥か後ろからぼんやりとなっているような。


演奏後にギター製作者の友人と少し話をする機会があって、その友人は”こういうハイレベルな楽器を聞けるのは嬉しいけど、自分の楽器をそこに並べる事が出来るかと自問すると辛い。でもそうならなきゃならない”と話していたのが印象的です。制作者、演奏者の違いはあれどそれは私も同じ思いでした。

到達出来る出来ないは問題ではなく、ただ憧れるのではなくその高さを目指さないといけないんですね。高見を目指し音楽の喜びを周りと共有し伝えて行く。それがこうやって深く音楽に関わってしまった人たちの義務なのかもしれません。


アンコールは二台の楽器を使ってソナタニ番のアンダンテとソナタ一番のアダージョ。松村を使ったアダージョがこの日一番凄まじい音を出していた様に思いました。

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演奏後の打ち上げでブーシェちょっと触ってきました。以前弾いたブーシェはかなり頑固モノでそれがイメージになってたんだけど、これはそれとは様子が違ってフレンドリーな感じ。無理にカッコつけて弾こうとすると”それはちょっと違うんでない?”って悲しげな顔をして、優しく弾くと少しだけ微笑んで素顔をかいま見せてくれた様な…繊細でそして底のしれないどこまでも捕らえ所の無い不思議な楽器でした。またいつか弾いてみたいです。
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by onkichi-yu-chi | 2014-08-04 17:07 | おんきち | Comments(0)

姫路のギタリスト渡辺悠也のblog


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