二台の銘器

先日伺ったギタリスト北口功氏のリサイタルの動画が上がっていたのでちょっと取り上げてみます。
この日は二台のギターを全後半で弾き分けていました。


これは前半に使われていた2000年製作の松村雅亘。松村の楽器は特に調弦をしてる時にワクワクします。ハーモニクスで音を合わせている時にその音の揺らぎがオーロラの揺らめきみたいに見える(聞こえる)音に厚みと揺らぎの様な物を感じさせるギターです。長い間北口氏のメインギターとして使っているということで演奏者と楽器の間の信頼関係みたいなものが感じられました。前半はバッハ、ソル、シューベルトというバロック〜古典、初期ロマンの楽曲で構成されていました。プログラムノートにも書いてありましたが問いと答えというこの時代の音楽の音楽展開の魅力を十分に引きだされていました。

このグランドソナタは20分を越える大曲なのですが全く飽きる事なくあっという間の演奏でした。そして前半の最後に弾いた影法師は素晴らしかった。ちょっと泣きそうになりました。

後半に使われていたドミンゴエステソ。1923年のマドリッドで制作された歴史的な銘器です。音は枯れていますが優雅さと気品があり、なにより音のキャラクターが明るいのが特徴的だなと思いました。後半はファリャ、ホセ、そしてアルベニスというオールスペインのプログラム。ホセのソナタは以前にもこの楽器での演奏を聞かせて頂きましたがこの日はさらに気合いが入って研ぎすまされていた様子。ホセの身を焦がす狂気の様な情熱が見事に表現されていたと思います。この曲はずっと観賞用というイメージがあり自分で弾こうとは思わなかったのですがこの日の演奏を聴いてちょっと挑戦してみたくなりましたね。

動画はアンコールに弾かれていたバリオスの祈りですが、もう一曲アンコールで弾いたバッハのチェロ組曲6番のガボットも素晴らしかったです。

二台の楽器を現地で聞き分けてそのキャラクターの違いはどういうところにあるのかなと考えていましたが、前半の松村は演奏者の力で物語を作り出す楽器、そして後半のエステソは楽器の中に込められた物語を引き出していく楽器なのかな…などと漠然と思いました。どちらも素晴らしい楽器ですが、その方向性は大きく異なっている様に感じました。時代的には古いはずの前半の楽曲の方が新しい音楽の様に聞こえて来たのが面白かったです。出来るなら同じプログラムを楽器を逆にして聞いてみたいですね。演奏者は大変でしょうが…
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by onkichi-yu-chi | 2012-05-05 02:05 | おんきち | Comments(0)

姫路のギタリスト渡辺悠也のblog


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